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ロボット支援手術(ダヴィンチ)について
東京都新宿区の国立国際医療センター病院 呼吸器外科では、肺がんや縦隔腫瘍を中心に、ロボット支援下手術(ダヴィンチ手術)を積極的に行っています。
ロボット支援下手術は、手術用ロボットが自動的に手術を行うものではありません。胸部に数か所の小さな傷をつくり、医師が手術用ロボットを操作して行う胸腔鏡手術です。 当科では2020年から手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を用いた呼吸器外科手術を開始し、経験を積み重ねてきました。現在では、肺がんや縦隔腫瘍に対する手術の多くをロボット支援下で行っています。
ロボット支援下手術とは?
ロボット支援下手術では、術者は患者さんから少し離れた「サージョンコンソール」と呼ばれる操作台に座り、高精細な3D画像を見ながら手術を行います。
術者が手元のコントローラーを操作すると、その動きが患者さんの体内に挿入された手術器具に伝わります。そのため、「ロボットが自動的に手術をする」のではなく、手術のすべての操作は術者である医師が行います。
ロボット支援下手術の特徴
ロボット支援下手術には、従来の胸腔鏡手術にはないいくつかの特徴があります。
高精細な3D画像
ロボットでは、胸の中を高精細な3D画像で立体的に観察することができます。血管、気管支、リンパ節などの位置関係や奥行きを把握しやすく、拡大された視野のもとで手術を行うことができます。
人の手首のように動く手術器具
通常の胸腔鏡手術で使用する器具は基本的に直線的ですが、ロボットの手術器具には多関節機能があり、人間の手首よりも広い可動域を持っています。胸の中のような限られた空間でも、さまざまな方向から器具を操作することができます。
手ぶれを補正した繊細な操作
術者の手の細かな震えをシステムが補正する機能があり、術者の動きを縮小して手術器具に伝えることもできます。これらの機能を活用することで、血管や気管支、リンパ節の周囲などでも、精密な操作を行うことが可能になります。
小さな傷で行う低侵襲手術
ロボット支援下手術は、胸を大きく開く開胸手術とは異なり、胸部に数か所の小さな傷をつくって行います。当科で肺がんに対する肺葉切除や区域切除を行う場合には、通常、側胸部に8mmの傷を3か所、12mmの傷を2か所設けます。
切除した肺を取り出す際には、このうち1か所の傷を延長し、区域切除では約2~3cm、肺葉切除では約3~4cmの傷から摘出します。傷は基本的に吸収糸で縫合するため、抜糸は必要ありません。
どのような病気にロボット支援下手術を行っていますか?
当科では、主に以下のような疾患に対してロボット支援下手術を行っています。
- 肺がん
- 転移性肺腫瘍
- 肺非定型抗酸菌症などの肺良性疾患
- 縦隔腫瘍
- 重症筋無力症に対する拡大胸腺摘除術
当科のロボット支援下手術(実績)
当科の常勤医師は全員がロボット手術の術者資格を有し、そのうち2名は日本呼吸器外科学会認定の**ロボット支援手術プロクター(手術指導医)**資格を有しています。
当科では、2020年8月から呼吸器外科領域のロボット支援下手術を開始し、手術件数を積み重ねてきました。2025年には、肺がんに対する肺葉切除・区域切除などの解剖学的切除の86%をロボット支援下で行っています。また、縦隔腫瘍についても、その多くをロボット支援下で手術しています。2025年12月末までに354例のロボット手術を行い、開胸移行例は今のところありません。
安全なロボット手術を行うために
ロボット支援下手術においても、私たちが最も大切にしているのは安全性と根治性です。
ロボットを使用すること自体が手術の目的ではありません。病気の大きさや位置、進行度、周囲の血管や臓器との関係、これまでの治療歴、患者さんの全身状態などを総合的に判断して手術方法を決定します。安全性や根治性の観点から、胸腔鏡下手術や開胸手術のほうが適切と判断される場合には、ロボット支援下手術にこだわらず、患者さんにとって適切な手術方法を選択します。また、万が一の機器トラブルや手術中の緊急事態にも対応できるよう、ロボットを速やかに患者さんから離し開胸手術に移行するための訓練や、停電時を想定した訓練などを定期的に行っています。
ロボット支援下手術を希望される患者さんへ
「肺がんの手術をロボットで受けられるか知りたい」
「他院で肺がんの手術を勧められたが、ロボット手術についても相談したい」
「縦隔腫瘍をロボットで手術できるか相談したい」
このような場合には、当科へご相談ください。
ロボット支援下手術が可能かどうかは、画像検査やこれまでの検査結果、患者さんの全身状態などを確認したうえで判断します。
ロボット手術を行うことそのものを目的とするのではなく、安全性と根治性を大切にしながら、患者さん一人ひとりにとってよりよい手術方法を一緒に考えていきます。
ロボット支援下手術についてさらに詳しく知りたい方へ
医療情報サイト「Medical Note」では、当科診療科長が肺がんの診断・治療や手術について詳しく解説しています。