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肺非定型抗酸菌症の手術
東京都新宿区の国立国際医療センター病院 呼吸器外科では、肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)、特に肺MAC症に対する外科治療を行っています。
肺NTM症の治療は薬物療法が基本ですが、薬物療法だけでは病気のコントロールが難しい場合や、空洞や高度な気管支拡張などの病変が肺の一部に残る場合には、薬物療法と手術を組み合わせることで治療効果が期待できる患者さんがいます。
当科では呼吸器内科と緊密に連携し、病気の広がり、治療への反応、呼吸機能などを総合的に評価して、手術を行うべきか、どの範囲を切除するべきかを検討しています。
肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)とは?
非結核性抗酸菌(NTM)は、土や水など私たちの身近な環境に存在する菌です。結核菌とは異なり、通常は人から人へ感染する病気ではありません。
肺NTM症の原因菌には多くの種類がありますが、日本ではMycobacterium aviumとMycobacterium intracellulareを合わせたMAC(Mycobacterium avium complex)による肺MAC症がもっとも多くみられます。
病気の進み方には個人差があり、長期間ほとんど変化しない方がいる一方で、徐々に気管支拡張や空洞などの肺病変が進行する方もいます。
肺NTM症ではどのような場合に手術を考えますか?
肺NTM症では、すべての患者さんに手術が必要なわけではありません。薬物療法が治療の基本であり、手術は薬物療法を補う治療として、適切な患者さんに検討します。
たとえば、以下のような場合には外科治療を検討することがあります。
- 薬物療法を行っても菌の排出が続く、あるいは再び菌が検出され、画像上も病変の悪化がみられる場合
- 空洞や高度な気管支拡張など、今後の再燃・再発の原因となることが懸念される病変が限局して残っている場合
- 病変から周囲の肺へ感染が広がる状態を繰り返している場合
- 喀血を繰り返す場合や、気道感染を繰り返す場合
- 肺アスペルギルス症など、ほかの感染症を合併している場合
国内で示されてきた外科治療の考え方でも、排菌の持続・再排菌、残存する空洞や気管支拡張病変、病勢の進行、喀血や反復する感染などが手術を検討する状況として挙げられています。 また、国際的な診療ガイドラインでも、薬物療法で十分な効果が得られない場合、空洞性病変、高度な気管支拡張、喀血などを有する一部の患者さんでは、専門家による検討のうえで薬物療法に手術を組み合わせることが提案されています。

手術では「病気の中心となっている部分」を取り除きます
肺NTM症では、CTで両方の肺に小さな粒状影などがみられることも珍しくありません。そのすべてを手術で取り除くことはできませんし、必ずしもその必要もありません。
外科治療では、菌の排出源となっていると考えられる空洞や、強く拡張した気管支など、病気の中心となっている病変を取り除くことが重要です。
一方で、正常な肺をできるだけ残すことも大切です。当科ではCTなどの画像を詳細に確認し、呼吸器内科と相談しながら、治療効果と肺機能温存のバランスを考えて切除する範囲を決定します。対側肺やほかの肺葉に小さな散布性病変があっても、必ずしもすべてを切除対象とする必要はないという考え方が示されています。
どのような手術を行いますか?
肺NTM症は、気管支に沿って病変が広がることが多いため、病変の分布を考えながら区域切除や肺葉切除などを行います。状況に応じて部分切除も検討します。
区域切除は、肺葉よりも小さい「区域」という単位で肺を切除する方法です。病変が限られた区域に集中している場合には、区域切除によって病変を取り除きながら、正常な肺をより多く残せる可能性があります。
一方、病変が一つの肺葉に広く分布している場合には肺葉切除が必要となることがあります。また、複数の区域に病変がまたがっている場合には、それぞれの病変の重要性を評価しながら切除範囲を検討します。
当科では、「できるだけ小さく切除する」ことだけを目的とせず、病気を十分にコントロールできる範囲を切除しながら、できる限り肺機能を温存することを大切にしています。肺MAC症の外科治療では区域切除・肺葉切除を中心に、呼吸器内科と相談して切除範囲を決めることを基本方針としています。
薬物療法と手術を組み合わせて治療します
肺NTM症に対する手術は、手術だけで治療を完結させるものではありません。多くの場合、手術の前から抗菌薬による治療を行い、手術後も呼吸器内科で薬物療法を継続します。国際的なガイドラインでも、外科切除は薬物療法に追加する治療として位置づけられ、報告された手術症例のほとんどで手術前後に抗菌薬治療が行われています。そのため、「いつ手術を行うか」も非常に重要です。
病変が広範囲に進行してから初めて手術を検討するのではなく、薬物療法の効果やCTの変化を確認しながら、将来的に手術が必要になる可能性も含めて呼吸器内科と呼吸器外科が早い段階から相談することが大切だと考えています。
身体への負担の少ない手術を目指します
肺NTM症の手術について相談したい方へ
「肺MAC症の薬物療法を続けているが、なかなか菌が陰性化しない」
「空洞や気管支拡張が残っており、手術についても相談したい」
「病変が徐々に広がっていると言われた」
「血痰・喀血や肺炎を繰り返している」
「手術が必要と言われたが、区域切除やロボット手術が可能か知りたい」