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微生物検査室
微生物検査室で実施している検査
微生物検査室は、感染症の原因となる病原体の特定と、病原体に対してどの抗生物質が有効かを調べる部門です。
検査項目
- 尿路感染症や食中毒、敗血症などの原因菌を特定する一般細菌検査
- 結核菌などの抗酸菌を扱う抗酸菌検査
- 微生物やウイルスの遺伝子を増幅して、病原体の特定を行う遺伝子(PCR)検査
一般細菌検査
血液・尿・便・喀痰などのさまざまな検査材料を塗抹検査(グラム染色)、分離培養検査、同定検査、薬剤感受性検査という工程で検査しています。
グラム染色
グラム染色とは、細菌類を色素によって染色する方法の一つで、細菌を分類する重要な染色方法です。当院ではバーミー法と呼ばれる方法で染色します。グラム陽性の球菌および桿菌、グラム陰性の球菌および桿菌のほかに、真菌や炎症が起きているときに見られる白血球の有無などを顕微鏡で観察し、染色性や形態からどのような菌が推定されるかを判断しています。近年は人工知能を用いたグラム染色の自動化AI機器も開発されてきました。
染色像:グラム陽性球菌
染色像:グラム陰性桿菌

自動染色分析装置:Mycrium®
(株式会社GramEye)
分離培養
検査材料を培地(寒天に栄養剤などを加えたもの)に塗布します。検査材料によって使用する培地を変え、正確に菌を検出できるようにしています。
材料を培地に塗布(分離培養)している様子
培地に発育した菌(大腸菌)
同定・感受性
培地に発育してきた菌を特定することを同定検査といいます。菌にもよりますが、多くの場合、検査材料から分離培養した翌日(菌の種類によって翌々日以降)培地に発育します。発育してきた菌は質量分析装置を用いて検査することで菌を同定することができます。
また、薬剤感受性検査は、有効な抗生物質を調べる検査です。菌の特定・薬剤感受性検査は主として自動分析器で検査を行っています。菌の発育状況により結果がわかるまでに2日から6日程度かかります。
微生物同定感受性分析装置:MicroScan WalkAway
(ベックマン・コールター株式会社)質量分析装置:MALDIバイオタイパー(ブルカージャパン株式会社)
当検査室で検出される菌は、感染症を引き起こすメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や食中毒原因菌のO(オー)157など数百種類に上ります。 一般細菌検査では、上記の他に迅速抗原検査と呼ばれる検査により、インフルエンザウイルス、新型コロナウイルスなどのウイルスを迅速に検出することが可能です。
抗酸菌検査
ヒトに結核を起こす結核菌をはじめとした抗酸菌感染症の病原体を検査します。抗酸菌検査は一般細菌検査同様に、塗抹検査、培養検査、同定検査、薬剤感受性検査という工程で検査しています。
塗抹検査
塗抹検査は抗酸菌を染め分けることができる特別な染色を行い、顕微鏡を用いて菌の有無を調べる検査です。
染色像:チール・ネルゼン染色
染色像:蛍光染色
培養検査
培養検査は抗酸菌が発育するのに最適な環境を人工的に作った培地に発育するかを調べる検査です。当院では機器を使用して検査を行います。抗酸菌の種類やその菌の状態によって発育する日数はそれぞれ異なるため、菌の発育が見られないことを確認するためには約6週間かかります。

抗酸菌培養検査装置:BDバクテック™ MGlT™
(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)
同定検査、薬剤感受性検査
培養検査で発育した場合、それが抗酸菌であるかどうかを確認します。抗酸菌であれば抗酸菌に属する菌の種類を確定する同定検査を実施します。その後、有効な抗生物質を調べる薬剤感受性検査を実施します。
遺伝子検査(PCR検査、核酸増幅検査)
遺伝子検査は微生物がもつ遺伝子を解析し、迅速的で正確な検査を行う検査方法です。 当検査室ではHIV-RNA量の測定、抗酸菌の検出、一般細菌や結核菌群の代表的な耐性遺伝子の検出、敗血症のおもな原因菌の検出、新型コロナウイルスなどの種々のウイルスの検出を行っています。
血中ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-RNA量
HIV-RNA量は血液中にHIVの遺伝子であるRNA量がどのくらいあるかを調べ、ウイルスの量を数値として表したものです。ウイルス量を測定することでHIV感染症の進行速度、治療中の抗HIV薬の効果などがわかります。

全自動遺伝子検査システム:cobas® 5800
(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)
抗酸菌/結核菌群の鑑別と耐性遺伝子検出
結核菌群(M.tuberculosis)と非結核性抗酸菌(M.aviumとM.intracellular)の鑑別ができます。抗酸菌の培養検査は結果が出るまでに数週間を要するため鑑別を正確かつ迅速に行うことは大変重要で、1日から2日で結果が得られる遺伝子増幅検査は適切な治療のために有効な検査です。また全世界では結核の再発と多剤耐性結核菌が出現し問題となっています。こうした中で薬剤耐性の有無を正確かつ迅速に把握することが重要とされています。
自動遺伝子解析装置
GeneXpert®システムGX-XVI自動遺伝子解析装置
TRCReady®-80
敗血症のおもな病原体及び薬剤耐性遺伝子群の検出
敗血症は生命をおびやかすことにもつながる感染症のため早期診断、早期治療は大変重要です。当検査室では血液培養の陽性判定から3時間以内で原因病原体と薬剤耐性遺伝子を検出することが可能な遺伝子検査を導入し、早期治療のために活用しています。

全自動遺伝子解析装置:FilmArray® Torch システム
(ビオメリュー・ジャパン株式会社)
ウイルスの検出
新型コロナウイルスをはじめ、インフルエンザウイルスやアデノウイルスなど種々の病原体を検出しています。迅速キットに比べ、少ないウイルス量でも検出することができ、重症化や二次感染を防ぎます。
リアルタイムPCR装置
QuantStudio3(Thermo Fisher Scientific)リアルタイムPCR装置
LightCycler96
(ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社)
自動核酸精製装置
Maxwell® RSC
(プロメガ株式会社)リアルタイム濁度測定装置:LoopampEXIA
(栄研化学株式会社)