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大腸癌腹膜播腫に対する積極的外科的切除

大腸癌腹膜播腫に対する積極的外科的切除

大腸癌が進行すると、肝臓・肺・腹膜などに転移することがあります。その中でも腹膜播種(腹膜転移)は、肝転移に次いで頻度が高い遠隔転移(Stage IV)のひとつです。肝転移や肺転移については、転移が単独臓器に限られる場合には切除により5年生存率が50%前後まで改善するとされていますが、腹膜播種は、診断が難しく、化学療法の効果が限定的で、完全切除が困難であるため、従来より予後不良とされてきました。

腹膜播種に対する考え方の変化

かつて腹膜播種は「進行がんの末期像」とされ、治療の対象から外れることもありました。しかし近年では、欧米を中心に、減量手術(CRS: Cytoreductive Surgery)と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC)を組み合わせることで、5年生存率が20~50%程度に改善されたとする報告が複数あり、症例を選べば外科的治療が推奨されるようになってきました。海外の治療ガイドラインでは、CRS+HIPECが選択肢の一つとして明記されるようになっています。

日本でも2019年に大腸癌治療ガイドラインが改訂され、限局性腹膜播種(P1/P2)に対して、完全切除が推奨されるようになりました。現在では、「腹膜播種がある=非治癒」ではなく、条件を満たせば外科的切除が検討される時代に入りつつあります。ただし、日本で一般に行われている「播種巣切除」は、病変部位のみの切除に留まることが多く、見逃しや取り残し、広範囲播種への対応が課題とされています。

当センターの取り組みと実績

当センターでは、従来から腹膜播種に対して減量手術(CRS)を積極的に行っており、500例以上の施行実績があります。対象疾患は、大腸癌腹膜播種に加え、腹膜偽粘液腫や腹膜悪性中皮腫など多岐にわたり、国内有数の経験を有する施設の一つです。

現在の治療方針:CRS単独による治癒を目指して

HIPECは、日本では保険未承認の治療法であり、「特定臨床研究法」により実施には厳格な条件が求められます。また、2021年に欧州で発表された無作為化比較試験では、CRS単独と比較したHIPECの明確な上乗せ効果は確認されませんでした。こうした経緯から、当センターでは現在、CRS(減量手術)のみで治癒を目指す方針に移行しています。

CRSは高度な専門性を要する治療です

CRSは、腹膜偽粘液腫などに対して海外で確立された治療法で、長時間にわたる高侵襲手術であり、施設の手術体制や術者の熟練度が治療成績に直結します。現在、他院でもCRSの安全性評価を目的とした臨床試験が行われておりますが、当センターではそれに先立ち長年にわたり多数の症例を経験してきており、治療成績も良好です。当院では2010年より導入し、累積500例を超える実績があります。合併症や治療成績は欧米と遜色ない良好な成績を収めています。

高度な術前評価と熟練チームによる外科治療

CRSは、腹膜偽粘液腫などで確立された手術法ですが、手術時間が長く、身体への負担が大きい高侵襲手術であるため、適応の見極めと術後管理が極めて重要です。当センターでは、CT、PET、診断腹腔鏡などを用いた多角的な術前評価を行い、CRSの適応となる患者様を慎重に選定しています。大腸癌腹膜播種は、適切な症例を選べば、外科治療により長期生存、さらには治癒も期待できる疾患です。

ご相談ください

腹膜播種に対しても、適切な診断と症例の選別により、長期生存が期待できるケースがあります。ご不安な方、他院で手術が困難とされた方も、まずは当センターのセカンドオピニオン外来にご相談ください。

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