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研究実績・活動実績
研究活動
当科ではレジデント・フェローがそれぞれの研究フィールドを持ち、日々のカンファレンスや診療の中で生まれるディスカッションを通じて互いの研究を深めています。臨床の疑問を拾い上げ、倫理申請からデータ収集、学会発表、論文執筆、競争的研究資金の獲得まで一気通貫で指導を受けられる体制があり、研修医・レジデント・フェローが筆頭著者として発表した論文は2020年以降で20編を超えます(研修医4編、レジデント14編、フェロー6編)。臨床一辺倒ではなく臨床、研究、教育の3本柱を重視するNCGM腎臓内科での経験はOB・OGそれぞれの医師人生に寄与するものとなっています。院内の他診療科、国立健康危機管理研究機構(JIHS)各部門、国内外の大学・施設との連携のもと、下記の幅広いテーマについて、現在進行中の内容を含めてご紹介いたします。
急性腎障害(AKI)と持続的腎代替療法(CRRT)
AKI診療におちて血清クレアチニンでは捉えられない早期の腎障害をどう見つけるか、という問題は非常に重要です。尿中L-FABPやNGALを組み合わせたバイオマーカーは術後AKI(Katagiri et al. 2012)や敗血症性AKI(Katagiri et al. 2013)の検出に有用で、腎前性AKIにも構造的障害が存在すること(Doi et al. 2012)を示し、一部の論文はAKI診療ガイドラインに採用されています。治療標的の探索としてシスプラチン腎障害モデルでGLP-1シグナルやVAP-1阻害の腎保護作用を報告し(Katagiri et al. 2013、Katagiri et al. 2016)、線維化・CKDへの移行については米国Vanderbilt大学との共同研究で糖尿病性腎症モデルの血管内皮機能(Katagiri et al. 2024、Katagiri et al. 2025)とMRIによる線維化評価(Wang et al. 2018、Katagiri et al. 2021)を検討しました。こうした視点は日常診療にも生きており、研修医が受け持った回腸導管に伴う腎後性AKI(Sato et al. 2020、研修医筆頭)や、レジデントが経験した重症マラリアに伴うAKIの予後予測(Katayama et al. 2024、レジデント筆頭)としても論文化されています。現在は、ICU敗血症患者を対象に自動尿量計測と尿中バイオマーカーを組み合わせたAIによるAKI予測モデルを名古屋大学と共同で開発し、治療面では院内のCRRTを当科にて施行しており、ビタミンE固定化膜を用いたCRRTの前向き観察研究を行っています。
慢性腎臓病(CKD)
CKD患者の進展抑制を目指す研究から透析患者のブラッドアクセスに関する研究まで、病期を問わず幅広いアプローチで取り組んでいます。
- 薬物療法については、腎保護薬が登場して久しいですが、その効果を実診療の中で検証するため、当科の外来患者コホートを用いてSGLT2阻害薬・ARNI・HIF-PH阻害薬の腎保護効果をレジデントが中心となって検証するとともに、多施設共同研究(ペマフィブラートのJKAPI-CKD)や、JIHS臨床疫学研究部と共同した大規模データベース(LIFE Study)によるリアルワールドデータ研究へと広げています。日本腎臓病総合レジストリー(J-RBR)、MPGN/C3腎症コホート、aHUS全国調査にも参画しています。
- 組織学的研究においては、同一切片上で多数の蛋白マーカーを同時に解析する空間的シングルセル分子病理解析(PhenoCycler-Fusion)を導入し、IgA腎症・ANCA関連血管炎・COVID-19関連腎症・糖尿病性腎症を対象にAIによる定量解析と組み合わせ、微小環境レベルの病態評価法の確立を目指しています(科研費 基盤研究(C) 2023–2025年度、2026–2028年度、日本腎臓財団CKD病態研究助成 2025年度)。腎生検の免疫染色から診断に迫った症例報告も、梅毒関連膜性腎症のNDNF染色(Sakamoto et al. 2025、フェロー筆頭)、急性腎盂腎炎に伴う急性間質性腎炎のCK7/CD10染色(Eriguchi et al. 2026、レジデント筆頭)と続いています。
- 透析においては、導入前の腎臓専門医による診療期間が導入後の転帰に与える影響(Yamada et al. 2025、レジデント筆頭)や、生物学的年齢指標による透析導入リスク予測を検討し、重要なブラッドアクセスについては、ワイヤレスデバイスとAIを用いたシャント狭窄評価に関する研究を実施しております。
- 複数の腎炎モデルについて尿由来幹細胞(UDC)を用いて診断と病勢評価が可能となるかの検討、AIを用いた新規腎機能改善薬の探索など基礎的検討も積極的に行っています。
- 当院は外国人診療も中心的に行っており、当科として国際診療部と共同した特定技能実習生の腎機能スクリーニングに関する提言(Isoda et al. 2025、研修医筆頭)を発表しました。
アフェレシス療法
当科では国内で承認されているすべてのアフェレシス療法を実施しており、この診療基盤から生まれるクリニカルクエスチョンを研究として展開しています。敗血症に対しては顆粒球吸着療法を積極的に行い都内有数の症例数を有することから、血液浄化療法の実態と転帰を明らかにするレジストリ研究を進めています。臨床研究の多くは若手が筆頭著者を務めており、神経免疫疾患(Horiguchi et al. 2026)や膠原病・ぶどう膜炎に対する血漿交換(Katayama et al. 2024)、難治性腹水に対するCART(Kaneko et al. 2025)はいずれもレジデントが、汎発性膿疱性乾癬に対する顆粒球除去療法(Shimada et al. 2022)はフェローがまとめ、研修医もアルコール性肝疾患に対する血漿交換の適応拡大を訴えるレター(Yoshimoto et al. 2024)を発表しています。日本アフェレシスレジストリにも参画しています。治療技術の面では、国内で主流の膜分離型に加えて世界標準の遠心分離型を導入し、末梢静脈からのアフェレシスを可能にしました(Otani et al. 2026、レジデント筆頭)。血漿交換とCRRTを同時に施行する回路の工夫など、集中治療領域への展開(Nishiyama et al., in press、レジデント筆頭)も進めています。さらに、より安全で留置可能なミッドラインカテーテルを用いたアフェレシスの研究、置換液計算ツール(Imamura et al. 2026)をはじめとする支援アプリの開発、次のパンデミックに備えた提言(Otani et al. 2025)へと、患者さんの負担軽減と安全性の向上を一貫して追求しています。国際展開としては、医療技術等国際展開推進事業(2021年度)によりマレーシアにおける透析医療の技術支援と臨床工学技士制度導入にも取り組んだほか、インドでの招待講演なども行っています。
先天代謝異常症・希少疾患
シスチノーシスは、当科が全国から症例のご紹介を受けている希少疾患です。白血球シスチン濃度測定と眼科との連携による確定診断を担い、フェローが筆頭著者として10年にわたる長期治療経過を報告する(Kawamura et al. 2024)など、症例の一例一例を丁寧に検証しています。治療の中心であるシステアミンの服薬負担を軽減するため、腸溶性製剤の開発を健康成人での単回投与試験(CYSTCAP)から患者を対象としたクロスオーバー特定臨床研究(CYSTCAP2)へと進めています。診療の中で明らかになってきた成人期の筋症状など腎外病変については、NCGM研究所(動物実験管理部)および国立精神・神経医療研究センター(NCNP)との共同研究として尿由来幹細胞(UDC)を用いた病態解明を進めており、この研究はレジデントが研究代表者として獲得した科研費 基盤研究(C)(2026–2028年度)とJH横断的研究推進費若手研究助成(2026–2027年度)の支援を受けています。同様に希少疾患であるファブリー病の診療も行い、ナショナルセンター・バイオバンクを基盤とするゲノム研究にも参画しています。
感染症と腎障害
未曾有のパンデミックとなったCOVID-19に対し、AKIとアフェレシスの両面から研究を展開しました。入院時の尿中L-FABPによる重症化予測(Katagiri et al. 2020)はレジデントが引き継ぎ、自ら筆頭著者となってSOFAスコアとの併用へと発展させ(Terakawa et al. 2025、特許出願、AMED ウイルス等感染症対策技術開発事業 2020年度、国際医療研究開発費 2020–2022年度)、維持透析患者への中和抗体薬投与の安全性(Terakawa et al. 2022)やワクチン接種後に発症した抗GBM抗体・MPO-ANCA二重陽性の急速進行性糸球体腎炎(Terakawa et al. 2023)も報告しています。あわせて、重症例に対するCRRT(Katagiri et al. 2021)とポリミキシンB固定化カラム(Katagiri et al. 2021、Katagiri et al. 2024)の治療成績、透析排液からのSARS-CoV-2検出(Okuhama et al. 2020)と尿検体の取り扱いに関する提言(Nomoto et al. 2020、PAHOガイドライン採用)を報告し、これらの成果は日本腎臓学会優秀演題賞、日本アフェレシス学会井上学術奨励賞、Wiley Top Cited Articleなどの評価を受けました。透析患者の感染症診療からも、維持透析患者の劇症型レジオネラ肺炎(Kawashima et al. 2020、研修医筆頭)、第4世代インターフェロンγ遊離試験を用いた透析患者の結核補助診断(Chinen et al. 2023、レジデント筆頭)、腎盂腎炎を伴う菌血症の起因菌として同定・命名した新種の連鎖球菌(Katayama et al. 2024、フェロー筆頭)など、日々の診療で拾い上げた疑問を論文として発信しています。HIVについては、1996年3月の薬害エイズ訴訟の和解の一環としてHIV診療の恒久対策として1997年4月1日に国立国際医療センターが拠点となりました。当科としてはHIV関連腎症の臨床病理学的検討に加え、東京都HIV透析ネットワークに参画して透析患者の受け入れ体制整備に関わっており、HIV感染者の微小変化型ネフローゼ症候群の治療中にEBウイルス再活性化による寒冷凝集素症を合併した症例報告(Bamba et al. 2026)もここから生まれています。
移行期医療(トランジション)
2019年に当院に移行支援外来が開設され、腎臓内科領域にまたがるトランジション診療を行ってきました。その成果は総合診療科と共同で論文化しています(Taniyama et al. 2025)。シスチノーシスをはじめ当科が診療する希少疾患では腎外病変を含めた長期管理が必要となるため、移行後の診療体制についても検討を続けています。
主な競争的研究資金
- 2026-2027年度 国際医療研究開発費(重点研究分野、代表:片桐)
- 2026–2028年度 科学研究費助成事業 基盤研究(C)「空間的シングルセル解析によるIgA腎症の病態評価」(研究代表者:片桐、26K11175)
- 2026–2028年度 科学研究費助成事業 基盤研究(C)「シスチノーシス成人筋症状の加速老化と治療法開発」(研究代表者:頓宮[レジデント]、26K11194)
- 2026–2027年度 JH横断的研究推進費 若手研究助成(研究代表者:頓宮[レジデント])
- 2025年度 日本腎臓財団 公募助成(CKD病態研究助成)(研究代表者:片桐)
- 2024年度 国際医療研究開発費(疾病研究分野、代表:片桐 ⁄ 分担:髙野)
- 2024年度 厚生労働科学研究費 地域医療基盤開発推進研究事業(分担:片桐)
- 2023–2025年度 科学研究費助成事業 基盤研究(C)「微小環境マルチプレックス解析システムを用いた腎疾患の新しい評価法の確立」(研究代表者:片桐、23K07687)
- 2023年度 AMED 医療機器開発推進研究事業(分担:髙野)
- 2021年度 医療技術等国際展開推進事業「マレーシアにおける透析医療の技術革新と臨床工学技士制度の導入」(代表:片桐)
- 2021–2022年度 国際医療研究開発費(重点研究分野)「COVID-19罹患による腎障害の中長期的評価」(代表:片桐 ⁄ 分担:髙野)
- 2020–2022年度 国際医療研究開発費「尿中バイオマーカーによるCOVID-19確診症例重症化リスクの臨床研究」(分担:片桐)
- 2020年度 AMED ウイルス等感染症対策技術開発事業「COVID-19罹患患者の重症化を非侵襲的にモニターするシステムの開発」(分担:片桐)
- 2019年度 国際医療研究開発費(重点研究分野、代表:片桐)